第97章 彼の前で威張るには、まだ格が足りない

南雲玲奈は自由になるや否や、香澄を抱きしめたまま、たたらを踏むように数歩後ろへ下がった。横尾孝人との距離を、一気に引き離す。

横尾孝人は、まさかこんなにもあっさり自分の手を振りほどかれるとは思っていなかったのだろう。ぎょっとして、動きが止まる。

――今の手際と力。

素人のそれじゃない。

少なくとも、相当鍛えた身のこなしだ。

(こいつ……何者だ?)

疑念は湧いた。だが同時に、男が玲奈を庇ったこと、玲奈がまるで自分を拒絶するように距離を取ったことが、彼の癇にさらに火を注いだ。

横尾孝人の気配がすっと冷え、声に刃が混じる。

「おまえと南雲玲奈がどういう関係だろうが知ったことか。だが...

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